サラリーマンなら知っておきたい住民税「特別徴収」のキホン

コラム
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 毎年6月、会社員の方々の給与明細を見ると、前月と比べて手取り額が減っていることに気づくかもしれません。これは、前年の所得に対して計算された「住民税」が、その月から新たに天引きされ始めるためです。

 住民税の納付方法にはいくつかありますが、会社員の方にとって最も一般的なのが、会社が給与から差し引いて納める「特別徴収」という方法です。この特別徴収、私たちの暮らしにどう関わっているのでしょうか?その仕組みを見ていきましょう。

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住民税ってどんな税金?

 まず、住民税とは、私たちが住んでいる都道府県と市区町村に納める税金のことです。行政サービス(教育、福祉、ごみ処理など)の費用を住民みんなで分かち合うための大切な財源となっています。

 住民税は、主に前年の所得に基づいて計算されるため、「去年たくさん稼いだら、来年の住民税が高くなる」という特徴があります。

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給与天引き「特別徴収」の仕組み

 特別徴収は、会社が従業員の皆さんに代わって住民税を給与から天引きし、まとめて自治体へ納付する仕組みです。

納付の流れはこう!

  1. 税額の決定: 毎年1月1日現在で住んでいる市区町村が、前年の所得に基づいて住民税額を計算します。
  2. 会社への通知: 毎年5月頃、各市区町村から会社(特別徴収義務者)へ、従業員一人ひとりの年間住民税額と、それを毎月いくら天引きすればよいかを示す「特別徴収税額決定通知書」が送られてきます。
  3. 天引きと納付の開始: この通知書に基づき、会社は6月の給与から翌年5月までの12ヶ月間、均等に分割した住民税額を毎月給与から天引きします。そして、天引きした税金を翌月の10日までに自治体へ納めます。

 このように、私たちは直接住民税を納める手間がなく、会社がすべてを代行してくれるため、納め忘れを防ぐことができるというメリットがあります。

特別徴収のココがポイント!

1. 手取り額の変化に注意!

 先ほども触れたように、住民税は前年の所得で決まります。そのため、例えば前年に転職や昇進で所得が大きく増えた場合、翌年の6月からは住民税の天引き額も大きく増え、手取りがグッと減ったように感じることがあります。これは決して会社の手違いではなく、前年の頑張りが翌年の税額に反映された結果です。

2. 新卒1年目と2年目の手取りの変化

 新卒で会社に入社したばかりの1年目は、前年の所得がない(あるいは非常に少ない)ため、原則として住民税は課税されません。そのため、給与から住民税が天引きされることはありません。
 しかし、2年目の6月からは、1年目の所得に基づいて計算された住民税の天引きが始まります。このため、1年目と比べて給与額が変わらなくても、2年目の6月以降は住民税の分だけ手取りが減ったように感じることが一般的です。これは多くの新卒社員が経験する「社会人2年目の壁」の一つとも言えます。

3. 退職時や転職時はどうなる?

 特別徴収は会社に在籍している間に行われるものですが、退職や転職の際には取り扱いが変わります。

  • 年度途中で退職した場合: 残りの住民税は、原則として最後の給与や退職金から一括で天引きされるか、自分で納める「普通徴収」に切り替えることになります。
  • 転職した場合: 新しい会社が特別徴収を継続してくれる場合もありますし、一度普通徴収に切り替わってから再度特別徴収になる場合もあります。

 この切り替えのタイミングで、住民税の納付方法が変わることに注意が必要です。

4. 副業・兼業をしている場合

 副業をしている場合、その所得にかかる住民税の取り扱いは注意が必要です。
 本業の給与所得以外の所得(例えば、事業所得や不動産所得など)にかかる住民税は、原則として「普通徴収」(自分で納付書を使って支払う方法)にすることができます。確定申告の際に、給与所得以外の住民税を普通徴収にするか、特別徴収に含めるかを選択できます。
 ただし、副業が本業と同じ「給与所得」である場合は、原則として合算されて特別徴収の対象となり、住民税を分けることはできません。 この点は、副業の形態によって取り扱いが異なるため、特に注意が必要です。

特別徴収は賢い納付方法?

 特別徴収は、納税の手間が省けるだけでなく、年12回に分けて納税できるため、一度に大きな金額を支払う負担が軽減されるというメリットもあります。普通徴収では年4回(6月、8月、10月、翌年1月)にまとめて納めるため、1回あたりの負担額が大きくなります。

 給与明細に記載されている「住民税」の額は、あなたの前年の活躍の証であり、住んでいる地域への貢献でもあります。仕組みを理解することで、賢く家計を管理し、安心して納税を進めていきましょう。

 

文書作成日時点での法令に基づく内容です。
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